LinuxFunddvd+rw-tools バージョン 5.12 までは、DVD-R['W'] 対応のための作業をユーザからのフィードバックのみに頼っていたため、そのサポート区分は “experimental” でした。 その後 LinuxFund.org から DVD- 対応ドライブが寄贈されたことでオンサイトテストを行うことができ、バージョン 5.13 のリリースから “experimental” を外すことができました。


Q1 dvd+rw-tools は cdrecord-ProDVD とどう違うのですか?

DVD-R['W'] の仕様では次の記録モードが定義されています。

  • Disk-at-once
  • Incremental Sequential
  • Restricted Overwrite (DVD-RW のみ)

cdrecord-ProDVD では、Disk-at-once しかサポートしていませんが、dvd+rw-tools は全てのモードをサポートします。それが決定的な違いです。

Q2 各記録モードの違いは何ですか? 私はどれを使えばいいのですか?

Disk-at-once は DVD-ROM/-Video との完全互換が保証されるモードです。 ただし書込みにおいてバッファアンダーランが起こらないことが前提です (技術の詳細は +RW ページの対応する個所を参照)。

DAO では追記録ができません。 また “DVD-Video との完全互換” というのは、このモードで記録されたDVD-RW メディアがどんなプレーヤでも再生可能ということを意味するのでは無いことに注意してください。 DVD-RW についても DVD+RW と類似した互換性の問題があることが報告されています。 これは論理フォーマットの問題ではなく、-RW と +RW の両方に共通するメディアの低反射率の問題です。

DVD-ROM/-Video と互換性のある追記型の記録方式としてシングルパケット/エクステント“レベル”があります。

growisofs は全ファイルシステムイメージをシングルエクステントで記録できますから、バッファアンダーランが起こる不安を除けば DAO 記録と同程度の互換性を期待しても良いでしょう。 実際はバッファアンダーラン防止機構があるので、システムにどのような負荷が掛かり続けたとしても心配する必要はないと思います。

また追記型の書込みにはマルチセッションの概念があり、dvd+rw-tools ではこれをサポートしています。 ただし気をつけなければいけないのは、DVD のマルチセッションをサポートする DVD-ROM プレーヤはほとんど存在しないということです。 DVD-R のサポートを明示しているドライブであっても、ほとんどは最初のセッションしか読めません。

Restricted Overwrite (DVD-RWのみ) は (一定の制約下で :-) 任意の上書きができる記録方式です。単一セッション内に限り、DVD+RW と同じ方法で ISO9660 ボリュームを grow させることができます。

ですからこのモードで焼かれた DVD-RW メディアは大抵の DVD-ROM ドライブで再生でき、マルチセッションをサポートしていなければ、これが(データを任意に追加したいという)あなたにとっての唯一の記録モードでしょう。 バッファアンダーラン防止機構は無条件に ON にします。

DVD-ROM/-Video との互換性についていえば、このモードで記録された場合のユーザデータゾーンは DAO のそれと等価なようですが、各 32KB ブロックはあたかもバッファアンダーランの影響を受けたかのように見えます。

Disk-at-once と追記型記録は DVD-R と DVD-RW のシーケンシャルモードでのみ使えます。

Restricted Overwrite モードはそれ専用にフォーマッティングされた DVD-RW メディアでのみ使えます。

Q3 どのようにDVD-RWのモードを切替えれば良いのですか?

初期状態の DVD-RW ブランクメディアはシーケンシャルモードになっています。 これを Restricted Overwrite 用にフォーマッティングするには、'dvd+rw-format /dev/scdN' とします。

一度メディアをフォーマッティングしたら、内容を消去する目的で再フォーマットすることは避けてください。 ['growisofs -Z ...'] として単に既存のデータを上書きするだけで十分です。

初回のフォーマッティングにおいてドライブがおかしなメディア容量を報告することがあります (例えば Pioneer DVR-x05 では約 8GB とか、本来容量の 178.5% など)。 これは一旦データが書き込まれれば正常になりますから気にしないでください。

メディアをシーケンシャルモードに戻す場合 [または既にシーケンシャルモードで使っているメディアを他のデータセット用に再利用する場合]、 'dvd+rw-format -blank /dev/scdN' とします。これには1倍速メディアで約1時間を要します。

また -blank=full とすることでメディアを Incremental Sequential モードで使えます (多分 Disk-at-once には使えないと思います)。 実は私はなぜこのような事をしなければならないのか知りません。 とにかくこれでうまくいくのです。

Q4 焼くための手順は?

具体的なの手順は +RW ページの growisofs の説明を参照してください。

Q5 他に注意すべきことはありますか?

growisofs による DVD-R['W'] の書込みにおいて、書込み速度を指定するための特別なオプション-speed=X が使えます。 お使いのメディアが有名なブランドの物であれば、多分このオプションは不要です。 ドライブがうまく (automagically) 最適な速度を選ぶはずです。

これに対し、ノーブランドのメディアの場合は -speed=1 が必須かもしれません。 報告によれば、あるドライブはノーブランドのメディアで速度選択に失敗し、結果として最高速になってしまうようです。 つまりメディアの能力を越える速度で書込みが行われ、再生できないディスクが出来上がります。 この状況はファームウェア (のバージョン) によって異なるようです (特に Pioneer 製ドライブのユーザはここを参照してください)。

-speed オプションを使う場合の一般的な問題として、4倍速のメディアで -speed=4 と明示的に指定しているにもかかわらず、実際の書込み速度が遅くなる場合があります。 これは特定のブランドがそのドライブのファームウェアでサポートされていないために起こる問題で、アプリケーションの問題ではありません。

growisofs はそのドライブがサポートする速度リストの中で、オプションで指定された速度に最も近いものを選ぶようドライブに指示しています。 この速度リストはメディアがロードされるたびに更新されるもので、dvd+rw-mediainfo コマンドを実行すれば確認できます。

SONY のサポートページからの引用ですが、 “市場に出回るディスクには品質や性能が要求水準に満たないものがある” とされています。 具体的にはどのようなトラブルが起こるのでしょう? 報告された例をいくつか挙げてみます。

DVD-RW なのに1回(あるいは2〜3回)しか書けない,ブランキング/フォーマット処理は成功するのにデータの書込みをしようとすると欠陥エラーになる,特定のドライブでしかブランキングができない,本来の容量の 95% あたりで DVD-R の書込みに失敗する,“INCOMPATIBLE MEDIUM” エラーが出て書込み開始できない,などなど。ほとんどの場合、別のブランドのメディアに替えれば解消するようです。

Restricted Overwrite モードにおける DVD-ROM/-Video との互換性についていえば、再生性 (Playability) は、DVD+ の lead-out の問題 (古いドライブで未使用メディアのキャリブレーションに失敗する問題,詳細は「互換性に関する注意」を参照) と似た理由により限界があるようです。

Restricted Overwrite モードで記録されたメディアが読み込めない場合は、次を試してみてください。

  1. 'growisofs -M /dev/scd0=/dev/zero' でディスクを満杯にしてみてください。 それでもうまくいかない場合は、
  2. シーケンシャルモードで再書込みしてください

今後のテストを容易にするため、またブランキング処理にかかる1時間を節約するため、growisofs バージョン 5.6 から DVD-RW の DAO 記録のサポートを開始しました (DVD-RW だけです)。 DAO 記録では追記できないことが growisofs の精神に反しますが :-)

またバージョン 5.6 ではすべてをドライブに任せることをやめ、書込み前に OPC (Optimal Power Calibration) を実行することを明示的に指示するようにしました。 これは必ずしも “良い事TM” とはいえないかもしれません。 なぜならファームウェアに書かれているメディアのプロファイルは、自動キャリブレーションで得られるものより適切である可能性を否定できないからです。

私はドライブが READ DISC INFORMATIONコ マンドの応答として OPC ディスクリプタを返すかどうか [もし返されたなら、実際はファームウェアに定義されている値が返されるのではないかとの予測のもと] チェックしてみているですが、今のところそのようなドライブに出会ったことはありません。 誰かこのことに詳しい方がいたら教えてください。