ここでは “DVD-ROM の互換性” と記録済みメディアを旧型ドライブで読む際の問題について考察します。 ブランクメディアの互換性やメディアの品質の問題、それからドライブのファームウェアに起因する記録開始不能・終了不能などの問題は扱いません。 そのドライブが公式にサポートするメディアを調べるか、その経験を皆と共有するなどしてください。


キャリブレーションにおける非互換性の問題

DVD['-ROM'] プレーヤはメディアごとにシーク時間を最適化すべく、メディアのロードのたびに自動的に機構のキャリブレーションを行います。

具体的には、光学ヘッドを決まった位置までスライドさせ、信号をピックアップし、レンズ直下の物理ブロックアドレスを検査します。 このため、書込み可能メディアでもその位置に何らかの情報を書き込んでおく必要があります (DVD+RW では解凍 de-ice という)。

あるドライブではこのキャリブレーションのためにヘッドを中心から 30mm スライドさせますが、別のドライブでは35mm だったりします。 このため、それらのドライブのキャリブレーションに対応させるためにはマウントする前に最低でも 1GB 程度の書込みが行われている必要があります。

別のドライブではキャリブレーションの目的で lead-out 部 (記録データの末尾を表す情報部) またはその近辺までシークしようとします。 そこで問題となるのは lead-out なしの DVD+RW ディスクです。dvd+rw-format ユーティリティを使って初めてフォーマッティングされた DVD+RW メ ディアは、全表面が未フォーマットであることを検出させないように lead-out が記録されないようです。 ですからもし DVD+RW メディアのマウント/再生に失敗したら、

dvd+rw-format -lead-out /dev/scdN

を試してみてください。 これは lead-out を現在データが記録されている最終セクタの直後に移動し、それより内周に未フォーマットエリアが存在しない状態にします。 現在記録されているデータには影響はありません。

ファイナライズされていない DVD+R とシーケンシャルモードで記録された DVD-R['W'] にも lead-out は存在しません(*)。 もし DVD+R メディアのマウント/再生に失敗し、残りのスペースを犠牲にしてでも読めるようにしたい場合はメディアを一杯にしてしまえば良いはずです(**)

あるいはマルチセッションを使わずに1回限りの書込みだけを行う場合は(***)、growisofs に -dvd-compat オプションを付け、最初のセッションの後に直接 lead-out を記録してしまう手があります。

(*) 実際は各セッションの終わりにそれぞれ lead-out が存在します。問題となるのは lead-in 部の “Control Data Zone” の “End Physical Sector Number of Data Area” フィールドが、メディアの最大セクタアドレスを保持しており、DVD['-ROM'] プレーヤがキャリブレーションの際にこれを参照すると、最初のセッションではなく、最外周までシークしようとして失敗する可能性があることです。 実際のところ、マルチセッションディスクなのにl ead-in に最初のセッションの最終セクタアドレスが書かれないのは何故なのか理解できていません。
(**) 4GB の制限に注意してください。 もし 4GB を使い切っていたり、メディア上の無関係と思えるデータも捨てきれない場合は、'growisofs -M /dev/scd0=/dev/zero' を試してみてください (バージョン 5.6 以上に限る)。 あるいは全ボリュームを再構成してしまうことです。 これには通常 -dvd-compat オプションを使います。
(***) 例えば DVD ビデオディスクのマスタリングをする際 -dvd-video オプション[mkisofsに渡されます]を付けますが、この場合は -dvd-compat の処理が自動的に行われます。

論理フォーマットの非互換性の問題

DVD+RW に関する議論のほとんどは、メディアを再生できないドライブに関することでしょう。 DVD+RW アライアンスは、DVD-ROM ベンダがわざと再生できないようにしているのだと非難するのに躍起になっています。

でも実際は認識できないフォーマット [lead-in の “Control Data Zone” にある “Book Type” フィールドのこと] を DVD-ROM として扱うことを明示していない仕様に問題があるのであり、文句をいったり、すべてのドライブで再生できることを期待するのは筋違いというものです。

すべての DVD+RW ベンダ [古くからの DVD+RW ベンダも、Sony,NEC,TDK のような最近参入したベンダも] はこの仕様の欠陥を認識しており、“Book Type” フィールドの扱いはベンダ固有の隠しコマンドによってなされているという状況です。

ですから DVD+RW メディアのマウント/再生に失敗した場合、次を試してみてください。

dvd+rw-booktype -dvd-rom -media /dev/scdN

繰り返しますが、これは全てのベンダがサポートするわけではないため、どんなドライブでも通用すると期待してはいけません。

lead-in が書き込まれる前 [つまり最初のセッションがクローズされる前] の DVD+R メディアで “Book Type” が扱えないのは自然なことです。 しかし次のようにドライブをプログラムし、lead-in 書込みを行わせることで “Book Type” とすることができるかもしれません。

dvd+rw-booktype -dvd-rom -unit+r /dev/scdN

つまり DVD+R メディアの再生がうまくいかないくても、諦めてしまうことはないということです。 dvd+rw-booktype に関する詳しい情報は dvdplusrw.org の “Compatibility Bitsettings” という記事を参考にしてください。

DVD+RW(*) の論理フォーマットに関する非互換性の問題はまだ潜在しますが、公式には上で述べた “Book Type” の問題だけが認識されていることになっています。 それはそうでしょう、それが DVD+RW メディアベンダだけに関わる問題ですから。

他の非互換性の問題を議論するには DVD['-ROM'] ドライブベンダの協力が必要ですが、DVD+RW フォーマットが DVD フォーラム(**)から承認されていない [多分これからも承認されることはない] ことに触れたくないためか表面化していません。

(*) DVD-ROM の “Book Type” としてファイナライズされた DVD+R メディアは事実上 DVD-ROM と同一です。
(**) 私はどちらに肩入れするというわけではありません。 DVD フォーラムは DVD+RW アライアンスと同様の製造企業連合でしかありません。 ですから誰かが技術開発上の主導権を握ることを止めさせる権利は誰にも [どの団体にも] ありません。

物理的非互換性の問題

DVD+RW の表面反射率が低すぎて光学ピックアップがトラックを読み取れないと文句をいう人々がいます。 あえて「文句をいう人々」と書いたのは、DVD['-ROM'] ドライブのベンダが非協力的なため、物理的な問題を論理フォーマットの問題から切り離すことできないためです。

またご存知の通り DVD+RW は2層 DVD-ROM と同じ反射率をもっています。 問題は1周あたりのリニアピット密度が1層のそれと同じだということです。つまりドライブが反射率を元にしてリニアピット密度を決めたとするとトラックをトレースできないという事です。

いずれにせよ我々にできることは読めないドライブは諦めて他のドライブを使うということくらいですが・・・。