とにかく実際にCPUの温度を測ってみます。 測定環境は当社LinuxサーバCシリーズと同じもので、概略は次の通りです。
項目 |
仕様 |
OS |
Redhat Linux 9 |
チップセット |
Intel 845G |
メモリ |
PC2100 DDR 512MB |
HDD |
80GB×2 RAID1構成 |
グラフィックス |
NVIDIA GeForce3MX |
ドライブ |
FDD×1, DVD−ROM×1 |
LAN |
100Base-TX 1ポート |
また測定条件は次の通りです。
- CPUはCeleron 2.2GHz, Celeron 2.4GHz, Pentium4 2.4GHzの3種類でいずれも1.525V品。
- CPUクーラはリテール版に付属するものは使わず、すべてのCPUで同一のものを用いる。用いたCPUクーラの諸元は次の通り。
メーカ: SPEEZE
型式: 9U236B1L3
材質: アルミ
ファン: サイズ7cm, 2500rpm固定スピード, 7枚羽
熱抵抗値: 0.41℃/W
エアフロー: 22.05CFM
ノイズレベル: 25dB(A)
メーカサイト: http://www.speeze.com/ |
外観
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【参考】 リテール版CPUに付属する標準CPUクーラはCeleron,Pentium4共に温度感知による自動変速タイプ。またCeleron用は7枚羽であるのに対し、Pentium4用は11枚羽。
本実験では同一条件を期すため、敢えてリテール版付属品は使わない。 |
- CPUの温度計測はCPUチップ内のサーモセンサをモニタする。Linux用の温度計測ドライバ
lm_sensors 組込みによる。 lm_sensorsの配布元は http://www2.lm-sensors.nu/~lm78/ 。
- ケース外部と内部の温度も電子温度計で計測する。
- CPUに負荷をかけるため、カーネルのコンパイルを連続5回まわし続けた時の温度とCPUアイドル率(CPUの余裕度)をモニタする。
上記の条件で行った実験結果を、コンパイル開始後の経過時間と温度の関係として下のグラフに示します。

ケース外温度は23℃でコンスタント,内部温度はアイドル時27℃・ピーク時30℃
コンパイル中のCPUアイドル率は、ほぼ0%をキープ
結果を見てすぐにわかるのは、さすがにPentium4はCeleronより速いということですね。各CPU共、温度が下がり始めるところが5回のコンパイルを終了したところです。
メモリを512MB積んだマシンですから、一度読み込んだファイルはメインメモリを使ったバッファキャッシュに残るため、2回目のコンパイルではディスクからの読み込みはほとんど発生しません。このためディスクI/Oの待ちはほとんど無く、CPUの性能が大きく効いてきます。
CeleronとPentium4の大きな違いはL2キャッシュのサイズです。 Pentium4は512KBでCeleronは4分の1の128KBです。
CPUのキャッシュはチップ上で比較的大きな面積を占めるため、このサイズによって消費電力が変わるのは当然です。上のグラフでは、この違いがCeleron
2.4GとPentium4 2.4Gで約2〜4℃の温度差となって見えています。 ちなみにこれら2つのCPUのスペック上のTDP値はいずれも59.8Wで同一です。
またコンパイルのようなCPUをフルに使った繰り返し処理ではキャッシュの大きさがものを言います。
Pentium4が圧倒的に速いのはこのためです。
逆にキャッシュのサイズが同じCeleron2.2Gと2.4Gではほとんど同着といったところです。温度は予想に反して2.2Gの方が若干高めに出ていますが、これはチップの個体差と思われます。
なお、この実験ではCPUを限界まで回していないことをお断りしておきます。 コンパイルという処理はCPUの整数演算部だけで事足りるからです。例えばFPU(浮動小数点演算ユニット),MMX処理部(マルチメディア用拡張命令処理部),SSE2処理部(ストリーミングSIMD拡張命令2処理部)などかなりの部分は使われていません。
逆にCPUがほとんど使われていないアイドル状態では、いずれのCPUも驚くほどの低発熱であることがわかります。
ケース内温度27℃に対してCPUコア温度29℃ですから、その差僅か2℃です。これはアイドル状態が比較的長いサーバにとっては、熱対策のみならず、省エネの点でもありがたい特性です。
CPUの処理性能の飛躍的な向上の裏で、このような高度な省エネ技術が着実に開発されて、実装されているのですね。この部分の設計チームに敬意を表します。
さて、改めてこの実験でわかったことをまとめてみます。
- 同一周波数のCeleronとPentium4では、TDPの仕様が同じだとしても実際の発熱量はCeleronの方が低い。
- 同一周波数のCeleronとPnetium4でカーネルのコンパイル時間を比較するとPentium4の方が圧倒的に短い。
- 同じCeleron同士では、10%程度の周波数の違いは性能や発熱量に表れない。
- CPUのアイドル状態の温度上昇は2℃程度である。
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今回はここまでです。 これまでの結果から、少し発熱量が多いもののPentium4の2.4GHzがSOHO向けサーバ用CPUとして有力候補ですね。
でもコンパイルの早さが重要なのでしょうか?
次回はWebアクセス処理能力を比較しながら、CPUの選定について解説していきます。
ご期待ください。
(石)
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