1. PC+Linux=SERVER?

自宅にWebサーバを置いてインターネットに公開する人が増えています。書店に行けば「自宅に置ける〜サーバ」とか、「自分で作る〜サーバ」などの本が目白押しで、少し腕に自信がある人なら自作PCにLinuxを入れ、自慢のホームページをインターネットに公開するところまではできるかもしれません。

しかしちょっと待ってください。まさかそれでビジネスを始めようなどと思っていませんか? もしかしてCPUはハイパースレッディング対応のPentium4 とかじゃないですか? PCケースは省スペースを狙って思い切り小さなものを使ったり、120GBのHDDを単体で使ったりしていませんか?

趣味の範囲を超えたとたんにサーバはその言葉本来の意味をもちます。つまり「止まらない」「壊れない」「データを失わない」という高い信頼性が要求され始めるのです。さらに家庭のリビングや書斎というコンピュータにとって比較的劣悪な環境に置かれるという状況を考えると商用サーバよりもずっと考慮すべき点は多いのです。

では「SOHOに適したサーバ」とはどういうものなのか具体的に考えてみましょう。


2. SOHO向けサーバとして考慮すべき点

家庭にサーバを置くSOHOにとって、情報システム部門を擁する企業と同じ基準でサーバを語ることはできません。次の表を見てください。サーバへの要求事項を企業とSOHOのそれぞれの観点で比較したものです。

表1 サーバに要求される仕様 企業 v.s. SOHO
比較項目 企    業 SOHO (家庭に置く場合)


理    由

理    由
CPUの性能 100〜1000rps*1
高度な並列化や高いピーク性能が要求される
せいぜい50rps*1
市販の1GHz〜2GHzクラスのCPUで十分で性能面で特に考慮すべき点はない
HDD冗長化 最低でもホットスワップ可能なRAID5は必要 (HDD1台が故障してもシステムを停止せずに修復可能) RAID1=ミラー化は必須 (修復には多少時間が掛かるがデータは失わない)
データバックアップ頻度 保守専任者による定期バックアップにより万全を期す バックアップ作業に費やす時間が無いため重要なデータのみ必要に応じてバックアップをとる
停電対策,電源サージ対策 コンピュータ室には安定な電力が供給されるもののUPSを設置し、停電やサージなどに万全を期す 家庭に置くサーバは、停電の影響や雷などによる電圧サージの影響をまとも受ける。またクーラや電熱製品の使いすぎでブレーカを落とす危険性もある
過温度対策 コンピュータ室は専用の空調で常時一定の温度に保たれており、サーバ単体での過温度対策が必要になることはない 人がいない時はエアコンは切られており、部屋の温度は40℃にも達することがあるため対策必須
騒音対策 コンピュータ室は元々うるさいものと割り切られており、余程のことが無い限り騒音対策を施すことは無い ファンの風切音やHDDのシーク音は普通の生活環境ではかなり大きく感じる。特に深夜の静寂の中では耐えられないものとなる
省スペース性 省スペースに越したことは無いが必要な設置スペースは確保できる サーバ設置スペースは深刻な問題。
サーバ用としてPCラックを置く余裕は(庶民には)無い。
レベル: ◎=重要な課題 ○=必要 △=最低限は必要,  *1 rps (requests per second) : 1秒当たりのHTTPリクエスト処理数

SOHOといえど、仮にもお客様を相手に商売をしようとするわけですからそれなりの心構えが必要です。サーバが頻繁にダウンしたり貴重なデータを失ったりすれば、信用を失墜させてしまいます。また家庭の中に置くものとして家族の理解も得られなくてはなりません。うるさかったり、ほとんど触りもしないのに場所を取ったりしたらそれこそ顰蹙を買ってしまいます。あとから買い直したりすることが無いように最初からきちんとしたサーバを仕立てましょう。

さて、それではSOHO向けの「きちんとした」サーバを仕立てるためには具体的には何をしたら良いのでしょうか?最も安易な方法は「IOSSのサーバをお求めください」ですが・・・これは反則ですね :-p

次回から、SOHO起業を目指す方々のために、自作を前提としたSOHO向けサーバの勘所を紹介します。 ご期待ください。

(石)