常時インバータ方式のUPSが理想的なものであることがわかりましたが、高価でサイズもPC並みの大きさです。一方小型で安価な常時商用方式のUPSはバックアップ切替時に無給電時間があったり、出力波形が矩形波だったりと、サーバ用には少し「ヤバイ」気がします。
そこでSOHOサーバに適したUPS選びのポイントについて解説します。
11.1 どの方式を選ぶか
どの方式を選ぶかは、サーバを設置する場所の電源事情とサーバの電源ユニットの安定度によります。
設置する場所の電源の電圧変動が比較的大きい場合・・・例えば時々電灯がフッと暗くなったりするような場合はライン・インタラクティブ方式か、できれば常時インバータ方式のUPSを使います。工場などで工作機械などと同じ電源ラインを使ってサーバを稼動させる場合は常時インバータ方式の採用をお奨めします。
ライン・インタラクティブ方式のUPSの中には、オンライン時の出力電圧調整にバッテリの充放電の助けを借りるものがあります。入力電圧が不安定でこの調整が頻繁に起こる場合は、バッテリの寿命を極端に縮めることになりますから注意が必要です。
設置する場所の電源電圧変動が少ない場合で、サーバの電源ユニットの入力電圧範囲が広く、その出力容量がサーバの消費電力に対して余裕がある場合は、常時商用方式のUPSを使っても問題ありません。
サーバを自作する場合、電源ユニット(ATX電源など)は次の点に注意して選定してください。
- 入力電圧範囲が100Vから規定されていること
多くの機種は入力電圧範囲が115V〜240Vとなっており、電圧低下の影響を受ける可能性がある。
- 出力容量は実際の消費電力に対して1.5倍以上であること
容量に余裕が無い場合、瞬停や短時間の電圧低下の影響を受ける可能性がある。
各パーツの消費電力を合算し、サーバの消費電力を推定してその値を1.5〜2倍した容量の電源ユニットを選ぶ。
【例】Celeron 2.4GHz,,80GB HDD×2,CD-RWドライブ,GeForce3MX VGAの場合の概算
部品 |
消費電力 |
CPU |
60W |
80GB HDD |
15W |
80GB HDD |
15W |
CD-RWドライブ |
20W |
VGA |
20W |
マザーボード,メモリ |
40W |
FDD,FAN他 |
20W |
合計 |
190W |
この場合、190W × 1.5 = 285W ですから300W以上の電源ユニットの採用を検討します。
- 各種安全基準をクリアした高品質な電源ユニットを選ぶ
得体の知れない電源ユニットは安定度や信頼性に疑問があります。品質が保証されているものを選ぶことが重要です。
なお、安定化電源ユニットを持たない機器には常時商用方式のUPSは使うべきではありません。例えば電熱機器やACモータをもつ機器などです。ADSLモデムやルータなどは通常問題ありません。
11.2 UPSの出力容量の決め方
UPSの方式が決まったら次は出力容量を決めます。
これは単に接続する機器の総消費電力を1.2〜1.5倍した値を基準にします。
【例】サーバ200W ,FTTH回線終端装置5W,ブロードバンドルータ15Wを接続
(200 + 5 + 15) ×1.2 = 276W
この場合は300W程度の出力容量をもつUPSを検討します。
なお、選定にあたっては出力容量の単位を間違えないようにしてください。皮相電力を表す「VA」と有効電力を表す「W」は別物です。UPSを接続する機器の最大消費電力の表記に従って適切なものを選択してください。
VAとWを換算する場合、商用電力でしたら、VA値×0.6 = W値 が目安となります。例えば500VAの場合は300Wとなります。
11.3 バッテリバックアップ時間の考え方
バッテリバックアップ時間はバッテリ容量に依存する仕様ですから出力容量の仕様とは無関係です。通常メーカのホームページに「消費電力に対するバックアップ時間の目安」としてデータが記載されています。
サーバでは、停電が起こってから最低でも5〜10分程度は稼動を続けられることが望まれます。停電発生からシャットダウンまでの間、サーバの管理者へのメールによる通知,ログインしているユーザへの通知,新規トランザクションの受付停止などの処理が必要になるからです。
5分のバックアップ運転を確保するとすれば、バッテリ劣化などを考慮すると、その2倍の10分がUPSの選定基準になります。
停電等のイベントをインターネット経由で通知する場合は、(当然ですが)サーバからインターネットに接続される経路にあるすべての機器・・・ルータ,回線終端装置,モデムなどの電源も合わせてバックアップする必要があります。
11.4 UPSのモニタリング
停電の発生やバックアップ運転への切替えなどのイベントがサーバに通知され、必要な処理が行われるようにする必要があります。このためにはサーバとUPSがシリアルケーブルなどで接続され、サーバ側でUPS状態をモニタするプロセスを常駐させる必要があります。
UPSの主要メーカは、通常Windows向けの監視プログラムを用意していますが、最近ではLinuxに対応したプログラムを公式に提供し始めています。また有志による専用ドライバの開発も行われています(apcupsdなど)。
Linuxサーバの電源をバックアップする場合は、使用するOSのバージョンに対応するドライバやプログラムが入手可能であることを確認しておく必要があります。また機種によってはオプションのケーブルを購入する必要があるので注意が必要です。
さて、最後に今回のまとめです。
- サーバにはUPSの設置が必須である。
- バッテリ方式のUPSには給電方式により「常時商用」「ライン・インタラクティブ」「常時インバータ」の3種類がある。
- 比較的電源事情が良く、サーバの電源ユニットの容量に余裕がある場合は、小型で安価な常時商用方式のUPSを採用することができる。
- バッテリバックアップ時間は10分以上のUPSを選ぶ。
- 停電やバックアップ運転切替わりなど、UPSが発するイベントをモニタし、適切な処理を行うドライバやプログラムを利用する。
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以上でUPSのお話しは終わりです。 ご意見やご要望・ご質問は当社の掲示板でお願いします。
さて、次回はデータバックアップのお話です。ご期待ください。
(石)
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